◆最適化研究会講演会(名古屋)
 
「令和4年度 最適化研究会講演会」
 
開催日: 2022年12月8日(木)
場 所: 対面とZoomの併用
参加者: 19名(講師2名含)

 今年度の講演会は、最適化研究会定例会のテーマの中から関心の高かった蓄熱技術と、最新のZEB認定工場についてご講演頂きました。

 
「低温排熱を利用可能な蓄熱システムによるオフライン熱輸送」

大山 孝政 氏(高砂熱学工業)

 吸着材「ハスクレイ」を利用した熱輸送システムについてご講演いただきました。吸着材のハスクレイは、水分の吸脱着反応を利用して蓄放熱します。吸着材を100℃以下の排熱と接触させて蓄熱し、20℃70%RH程度の空気と接触させることで70℃程度の空気となって放熱します。20℃の空気を7,000m3/h流すと約4時間、約70℃の高温空気を供給できます。この時の供給熱量は1.8GJ/回で、実証での蓄熱効率は90%でした。吸着材を入れた蓄熱槽コンテナを車両で輸送することで、排熱の利用時間や利用場所のギャップを解消でき、低温排熱を有効活用できます。送風ファン電力に配送の燃料を足しても、従来のボイラで熱を生産するより省エネとなるシステムです。事業費の試算では、人件費がかからず場内熱輸送が可能な場合、年中利用できれば9年、長くて15年程度で投資回収できる試算結果です。さらに除湿利用が可能であれば、ボイラ燃料と除湿器電気代の削減が見込め、約半分の年数で投資回収できます。今回紹介したシステムは、2021年度のコジェネ大賞を受賞したとのことです。

 
「OKI本庄工場H1棟
  〜大規模生産施設で国内初の『ZEB』と新たな評価指標“ZEF”の構築〜」
信藤 邦太 氏(大成建設)

 大規模生産施設で国内初の『ZEB』認証を取得した工場の概要と、工場を対象とした新たな評価指標ZEFについてご講演いただきました。OKI本庄工場は、秩父杉で作成したCLT板を構造材や内装に利用し、建物全体でCO2換算119トンを貯蔵しています。本建物は51%の省エネと82%の創エネで合計133%削減を実現し、『ZEB』の認証を取得しました。生産エリアの最適制御技術「T-Factory Next」では、生産設備の稼働状況と人の在/不在状況に合わせたリアルタイムの照明・空調・換気制御や、AIによるエネルギー負荷予測機能でオートチューニングを可能としました。この技術により、熱源システムCOPの向上など空調エネルギーを削減しました。現状のZEBでは、工場の生産エリアは評価対象外のため、生産エリアの空調・換気・照明等を評価対象に含めた「ZEF」(製造機器のエネルギーは別)を提案しました。ZEFの基準値は規定されていないため、2019年度の既存工場の消費エネルギーを参考に算出しました。本建物をZEF基準で評価した結果、56%の省エネと19%の創エネで合計75%削減となり、「Nearly ZEF」の評価となりました。今後も、太陽光パネルの増設(+19%の創エネ)と共創による更なる省エネ(8%の省エネ)で「ZEF」の達成を目指すとのことです。

 
文責:成瀬