◆見学会(名古屋)
 
「大名古屋ビルヂング」
第16回 建築設備研究会
 
主   催: 空気調和・衛生工学会中部支部 建築設備研究会
日   時: 平成29年6月29日(木) 9:30〜11:50
見学場所: 大名古屋ビルヂング(名古屋市中村区名駅三丁目28−12)
参 加 者 : 36名

 大名古屋ビルヂング(地上34F、地下4F、延べ面積約148,000m2)は、名古屋駅前のシンボルとして親しまれてきた旧大名古屋ビルヂングとロイヤルパークイン名古屋の敷地及び市道の廃道部を一体的にまとめ、名古屋駅前景観に緑をもたらす、「緑の丘に建つ大樹」をモチーフに複合施設として生まれ変わりました。外装、内装デザインの変更と継承、省エネルギー設備導入、空調・防災設備導入等によってCASBEE名古屋のSランク、DBJ Green Building 「Platinum Plan 2012」を取得した本ビルの見学会を開催させて頂きました。

 
1) 「大樹」をイメージした内外部デザイン
 外観の最大の特徴である「縦リブ」は、枝葉を見立てられたもので、距離、角度、時間によって表情を変えるだけでなく、庇としての効果もあり。また、このイメージは内部のデザインにも連続性をもって繋がっており、階層によって「木漏れ日」や「根」を表現。地上階には街路樹、低層部屋上には2,000 m2の庭園が設けられており、「緑の丘」をコンセプトに空間を演出。
 
2) 事務空間の省エネルギー性とユーティリティ
 7階から33階のオフィスは有効面積2,500 m2の無柱空間となっており、使い勝手の良い広大な空間を構成。外装部にはエアフローウィンドウシステムを採用し、ウィンドウ内部のブラインドは室内センサーを受けて自動的にスラット角度を調整することで日射をコントロール。そのほかにもVAVによる風量制御、太陽光発電、高効率地域冷暖房により、効率化を図る。
 
3) 災害時対応
 名古屋では大雨による床上浸水被害の発生、また、大地震の発生などの災害が危惧される。そこで、500 m2の雨水貯水槽が設置され(雑用水としての有効活用)、通常の1.5倍の耐震基準を満たす。ガスと重油のデュアルフューエル型ガスタービン発電装置を有しており、非常時には電力供給が可能。
 
 見学会では、前述の建築設備の概要を説明いただいたあと、基準階事務室、低層の中間機械室、B4F機械室を順に巡り、エアフローウインドウなど窓周りのシステムや、地冷の受入機械室、特高電気室、デュアルタイプの非常用発電装置などを見学させて頂きました。建築計画では、「緑の丘に建つ大樹」というモチーフに沿いつつ、名古屋の人々に親しまれた旧大名古屋ビルヂングの面影が随所に残されており、引き続き親しまれる建物になるようにとの思いが散りばめられているように感じました。また、オフィスフロアでは使い勝手と省エネルギー性の両面から工夫がなされており、実績のある設備で確実な効果が出るように計画されていると感じました。災害時対応については、名古屋駅周辺の被災者が安心して避難できる強度と設備的容量を有していました。
 設備見学では各設備の容量や系統、運用方法について、丁寧にご説明頂きました。また質疑応答では、非常時の発電時間に関する質問があり、2日から最大で1週間程度の運用が可能であることを説明頂きました。今後の支部研究発表会等において、大名古屋ビルヂングの温熱環境やエネルギー消費実態について是非ともご報告頂きたいと感じました。
 
大名古屋ビルヂング見学会報告
 
文責:鍋島