最適化研究会
シンポジウム報告
日   時: 平成17年3月10日(木)
参加人員: 56名
平成16年度の最適化研究会シンポジウムでは、これまでの6年間の活動を総括するということで、研究会で取り上げられたテーマについて、以下の5名の講師による講演が行われた。
「中電岐阜ビルの高効率空調熱源システムと運転検証」小林 利文 氏(中部電力)
一般事務所ビルよりもエネルギー使用量を大幅に削減することを目標として設計された中部電力岐阜ビルの設備と、運転実績の報告が報告された。熱源には、超高効率(COP=7.59)のスクリューヒートポンプと低水深温度成層蓄熱槽が設置され、二次側は低温吹出空調が採用されている。初年度に生じた2次ポンプの調整不良を改善して、全体で21%の削減が達成できている。

「中電岐阜ビルの熱負荷予測による蓄熱運転制御」中井 一夫 氏(トーエネック)
同じ中電岐阜ビルの蓄熱システムに関して、カルマンフィルタを用いた負荷予測システムを開発した。予測モデルの性質により、予測と実測の誤差が生じる場合もあるが、ほぼ適切な熱源運転が行われており、夜間移行率も向上している。設備運転管理者が熱源運転時間の調整を行う必要がないことが大きなメリットであることが示された。

「都市ガス空調の熱源機器の開発状況」中村 直人 氏(東邦ガス)
最近採用の増えているガス空調システムの熱源機器について、高効率ガスエンジンヒートポンプ(GHP)、GHP室外マルチシステム、GHP遠隔管理システム、吸収式グリーン制度、さらに開発中の技術として三重効用吸収式冷凍機など、最近の動向が紹介された。

「冷凍機用ポンプ流量制御システム」合田 徹 氏(ダイダン)
搬送動力の削減を目的とした熱源一次側の変流量制御システムについて。送り側と還り側のバイパス流量を検出して、これが無くなるようにポンプをインバーター制御する。バルブでの調整を行うことなく流量を制御することで、回転数の3乗に比例するエネルギー消費を節減できる。運転時間の長い工場などでは、60%の省エネルギー効果が得られた。

「空調熱源二次ポンプ省エネルギーシステム」谷 恵介 氏 (朝日工業社)
こちらは二次側の省エネルギーに関する講演で、流量調整を管路抵抗特性を予測し、これに応じた回転数制御を行うことでエネルギー消費を削減するシステム。設定圧力一定制御に比べて、管路を絞ることがないので大幅な省エネルギーが実現でき、総合病院、ホテル、工場など稼動率の高い施設では、70〜80%の年間ポンプ消費エネルギーの削減を実現できた。

以上5件の発表について、会場からは活発な質疑・討論があり、予定の時間をやや超過して終了し、建築設備技術について有意義な情報交換が行われたと考えている。
(主査:中部大学 山羽 基)