建築設備研修部会 講演会

日時: 平成16年6月15日
今回の講演は,名古屋大学 森川高行先生による「“みちのまち”名古屋の再生」,東京大学 沖大幹先生による「ヴァーチャルウォターを考慮した世界の水資源アセスメント」についての講演が行われました。

[森川高行先生の講演概要]
日本の中心、交通の要衝に位置する名古屋都市圏は、産業・経済面でも強さを発揮しているが、観光客の少なさに反映されるように街の魅力に欠けている。さらには、自分の街を誇りに思っている住民が少ない点がより深刻な問題である。これには、魅力的な観光・文化施設が少ないことも理由となるが、都心部において広幅員の街路が多く、街全体がモータリゼーションに蝕まれていることも原因であると思われる。本講演では、名古屋の整備された道路を活用した「みちのまち」としての都市再生の方向性を提示したい。具体的には、都心部街路の機能の多様化、交通システムへITを活用するITSによるまちづくり、そこに都市内緑化などを施した快適な空間づくりを提案する。

[沖大幹先生の講演概要]
人口爆発や気候変動などに伴う世界的な水問題の深刻化が懸念されている。しかし、そうした世界水危機に関する情報には、いたずらに危機を煽るものや根拠が明確でないものも多く、日本から世界への発信が少ないことも問題であった。我々の研究グループでは生物地球化学的な陸面水文植生モデルを利用した世界の水資源賦存量推定、グローバルGISと国別統計を利用した水資源使用量の推定等を行い、渇水の深刻度のグローバルな推定を行ってきた。さらに、そうした自然状態の水循環情報に基づく水需給だけではなく、国際的な交易に伴ういわゆるヴァーチャルウォーターの交易量を推定し、それによって各国の水需給がいかに緩和されているか、また、世界的にみてもどの程度水需要削減に寄与していると考えることができるかを明らかにした。また、ヴァーチャルウォーターという思考toolの長所と限界や、今世紀前半に懸念される世界的な水不足への対応の道筋について述べた。

建築関係の方を中心に,多数の学生の参加者も交え活発な質問が飛び交い,大変盛況のうちに無事閉会致しました。